ニュースリリース
膵臓がんにおけるネオアンチゲン樹状細胞療法に関連する論文公表のお知らせ
- 2025年5月20日
- プレスリリース
当社は、医療法人 慈生会 福岡がん総合クリニック(所在地 福岡市博多区、理事長・院長 森崎 隆)とネオアンチゲン樹状細胞療法(※1)の科学的検証に係る共同研究を推進しております。この度、本研究に関連する論文がFrontiers in Immunology誌に掲載されましたので、お知らせいたします。
(https://www.frontiersin.org/journals/immunology/articles/10.3389/fimmu.2025.1571182/full)
膵臓がん は、早期発見と治療が特に難しいがんとして知られており、膵臓がんと診断された段階で手術を受けられる患者さんは約20%に限られます。また、手術によりがんを切除できても多くの患者さんは2年以内に再発し、手術後の5年生存率は極めて低く20~40%となっています。このため、再発予防や、治療効果を高めるための新たな治療法の開発が強く望まれています。
本研究では、手術後の膵臓がん症例におけるネオアンチゲン樹状細胞療法の効果を検証するため、再発後の治療を目的とした9例および再発予防を目的とした7例を対象にネオアンチゲン樹状細胞療法を行いました。
その結果、全16例のうち13例(81.3%) でネオアンチゲン特異的T細胞の免疫反応が確認されました。再発後に治療を受けた9例のうち、ネオアンチゲン特異的T細胞の免疫反応が認められた7例は、免疫反応が認められなかった2例より有意に長い全生存期間を示し、そのうち3例は再発後36ヶ月以上の生存を達成しました。また、手術後の再発予防を目的とした治療を受けた7例のうち、がんが再発した症例は1例のみで、追跡期間中の死亡例はありませんでした。
さらに、キラーT細胞を誘導するHLAクラスI拘束性ネオアンチゲンとヘルパーT細胞を誘導するHLAクラスII拘束性ネオアンチゲンを組み合わせて治療を行い、腫瘍縮小を認めた症例について、詳細な解析を行いました。その結果、HLAクラスII拘束性ネオアンチゲンによって誘導されたヘルパーT細胞クローンの増殖が確認されたことから、HLAクラスII拘束性ペプチドが腫瘍の縮小に寄与した可能性が示唆されました。
これらの結果から、手術後の膵臓がんにおける再発後の治療および再発予防のための治療の両方において、ネオアンチゲン樹状細胞療法の実現可能性と有効性が示唆されました。また、HLAクラスII拘束性ペプチドと組み合わせることによりネオアンチゲン特異的ヘルパーT細胞を誘導することの重要性が示されました。
本研究において、次世代シーケンス技術を用いたHLAクラスI/II拘束性ネオアンチゲン解析は当社で実施しました。
※1ネオアンチゲン樹状細胞療法:
ネオアンチゲンは、個々の患者さんのがんの遺伝子変異によって作られる、異常なタンパク質です。正常細胞で作られるタンパク質とは性質が異なるため、免疫細胞が強く反応すると考えられています。
樹状細胞は、ウイルスやがん細胞等が持っている目印(抗原)を提示して、リンパ球に攻撃するように指令を出す働きをもっています。この働きを利用して、患者さんの樹状細胞を血液から取り出し、がんの目印となるネオアンチゲンを提示させてから体内へ戻すことによって、リンパ球にがんを攻撃させる治療法をネオアンチゲン樹状細胞療法といいます。
(参考)オンコセラピー・サイエンス株式会社 ビジネスニュース
https://www.oncotherapy.co.jp/wp-content/uploads/2025/05/250520_01.pdf